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電気系統の修理

URF店長:太田です。

このところ、本業が忙しく、リニューアル中のHPも
ブログも更新できずにいました。^^;

本業の話と言えば、先月から今月に掛けて2件
たて続けて入って来たのが、
『電気系の不具合で、エンジンが始動しない』という修理でした。


1台は『ホンダCBR1100XX(通称:ブラックバード)』そしてもう1台は、
同じくホンダ『Today』です。

症状はブラックバードは「キーをONにしても電源が入らない」そして

Todayの方は、「いきなりエンジンが掛からなくなった」でした。

2台とも「原因追究から修理が終わるまで」を書くと長編小説並みになりますので、
結果だけ端折ってしまえば、ブラックバードはメインハーネス内のどこかで
主電源線の断線の疑い。Todayの方は、CDIのパンクでした。

電気系統のトラブルは、原因を突き止めるまでに膨大な時間を費やします。

例えば、転倒などで壊れた部品を交換する修理が人間に置き換えると

『外科的手術』で、目に見えるダメージを受けた部分が判り易いのですが、
電気系の修理は『神経科』のようなもの
で、まずは原因を探り、

「目に見えないものを直す」という難儀な手術となります。

 

その原因を見つかるまでが大変な作業で、部品交換修理と決定的に異なるのは、

部品交換修理なら工数(交換修理に要するおおよその時間)の目安がありますが、

電気系統の修理は、「原因を確定するまで何時間掛かるか判らない」のです。

もちろん、メーカーが出しているサービスマニュアルにはその原因を探す手順や

方法が書かれていますが、往々にして「マニュアル通りにはいかない」のです。

逆にマニュアルに書かれている手順で原因がすぐ判れば、時間も掛かりません。

 

となると、頼りになるのは、1に『経験』2に『情報』3には『猜疑心』でしょうか。

経験は「過去に同じような事例はなかったか?」であり、

情報は「同じような事例を直したことのある人(店)はないか」で

猜疑心は「もしかしたら、あそこも怪しいのでは??」と原因になりそうな場所を

全て疑って掛かる。ということです。

 

今回、このブラックバードは幸いにして、一緒に原因を探してくれた元整備士のM君が
「太田さん、これと全く同じ症例を直したショップさんの修理ブログを見つけました!」と

有力な情報提供をしてくれたおかげで、原因と思われる主電源線をテスターでチェック。
「確かに導通がない・・・そのショップさんに入ったバイクと全く同じ状態だ。

ということは、これもメインハーネス内のどこかで断線している可能性が高いな」

 

原因が断定出来たところで、所有者のお客様には4つの選択肢から選んでもらうことにしました。

その4つの選択肢とは、
1、新品ハーネスに全交換(メーカーから新品が出れば可能、一番安心だが1番費用も掛かる)

2、中古ハーネスをネット探して交換(部品代は安くなるが、数年後に再発の恐れあり)

3、メインハーネスを全部剥いて、一つ一つテスターを当てて断線箇所を調べる(膨大な時間が掛かる)

4、断線している疑いのある、主電源線とは別に新たに主電源線を設置する(バイパス手術)

でした。

所有するお客さま(医療関係者)が選んだのは、4、のバイパス手術。

これなら時間も費用も安く済み、ほぼ確実に問題を克服できる修理です。

 

結果、劣化してハーネス内で断線したと思われる主電源線に見切りを付け、

新設した主電源線でバイパスさせたことで電気系統は全て完全復活。

しかも新たに設置した主電源線に純正配線より1サイズ太いコードを使ったこともあり

「エンジン始動性UP」「吹け上がりが軽くなった」(電気の流れが良くなったため)

という副産物の効果も出て、施工した自分もちょっと驚きました。(^^ゞ

 

たぶん“普通のバイク屋”なら、1か3を選択して修理すると思いますが、当店では

所有するお客さまと相談し、修理時間や工賃などの『費用対効果』を最も重視します。

「出来るだけ早く、安く直して欲しい」というのは、どのお客さまも同じだと思いますが、
それに加え、「(少し邪道に近いやり方でも)確実に直る方法も提案する」ことも

大事ではないかと思っています。

もちろんケースバイケースで、お客さまが望めば時間と予算をそれなりに頂いて

正攻法の修理もいたします。


という感じで、結構難儀な修理事例でしたが、お渡しした時のお客さまの笑顔と
報酬に換えられない、感謝の言葉を胸にこれからも面倒な修理に挑みます。(^^ゞ